株式会社石川組製糸所
石川組製糸所(石川製糸)は、明治26年(1893)に石川幾太郎が創業した会社です。操業当初は座繰り製糸(手工業)という歯車仕掛けの道具を使用し、わずか5人の製糸会社でした。その後、明治28年には機械製糸(蒸気による製糸機)を導入し、次第に経営の規模を拡大していきました。
最盛期には入間市・狭山市にそれぞれ2工場、川越市に1工場、福島県・愛知県・三重県に各1工場を有する大会社に発展しました。1925年の記録によると、従業員男500人、女4,000人、総釜数3,300、生糸生産量371トンであったといいます。なお、石川組製糸所は関東大震災や昭和恐慌の影響で経営不振に陥り、昭和12年(1937)に倒産しています。
旧石川組製糸西洋館の写真(2)
【西洋館の応接室】
旧石川組製糸西洋館を見学(2)
会社が拡大する過程で販売経路を欧米に求めていた石川幾太郎は、商談のために外国人商人を招く機会が多くありました。幾太郎は商人を招待したときの施設として、ぜいを尽くした迎賓館(西洋館)の建設を決意しました。
その西洋館の各部屋の中で、一番凝ったつくりとなっているのが応接室です。
【応接室の天井】
応接室の天井
応接室の天井は和風工法による折上小組格天井(おりあげこぐみごうてんじょう)、周囲を折り上げ天井部は小さい格子模様になっています。壁にはこの西洋館創建当時の壁紙が貼られ、彫刻が施されたカーテンボックスが設置されています。
【応接室に置かれた本棚】
八音克諧と書かれた本棚(物入れ)
この本棚は、大正15年11月下旬に制作されたもので、扉の文字は東京の儒家・亀田英(かめだ あずさ)の筆になります。三連の文字は中国最古の歴史書「書経(しょきょう)」からの一節で、右から
八音克諧(はちおんこくかい)
無想奪倫(むそうだつりん)
神人以和(しんじんいわ)
と書かれています。「物事がよく調和し、互いに関係を乱さなければ、自然と人は一つになれる」という意味です。
八音とは8つの材料で作られた8種の楽器を指します。この八音を石川家の8人の兄弟姉妹(※1.創業八家)に当てはめたとすると、「創業八家がよく協力し、互いに関係を乱さなければ、石川家一族は繁栄する」ということを暗示しているのかもしれません。
※1.創業八家
石川幾太郎(長男:石川組製糸の創業者)、石川幸助(次男:副社長)、石川和助(三男:石川家の家訓を起草)、石川れん(長女)、石川龍蔵(四男:石川組製糸の渉外役)、石川つめ(次女:石川組製糸の女工総監督)、石川仁平(五男:川越工場長)、石川りよ(三女:原ノ町工場長と結婚)
【東和室(手前)、西和室(奥)】
西洋館に和室がある!
2階へあがったすぐ右手には和室があります。この部屋は戦後、進駐軍によって西洋館が接収された際、洋室に改造され、その後、返還を受けた後に所有者によって和室に戻された、という経緯があります。洋室に改造された時の跡として、床の間にあるクローゼット(東和室)と2階ホールへ出るドア(西和室)が今も残ります。
【大広間】
西洋館2階の大広間
2階大広間の天井はシンプルな格天井、床は周囲が組細工による模様を持ち、この内側はコルク敷きとなっています。カーテンボックスの布は創建当時のもの。大広間に入って右側にはベランダがありますが、戦後、進駐軍によってキッチンに改造されています。
【大広間のステンドグラス】
大広間のステンドグラス
大広間にあるステンドグラスの図柄は、中国の東洋画の画材とされる四君子(しくんし)を基本(蘭・竹・梅・菊の四つの柄)としています。ただし、独自の趣向を凝らしているようで、左から「蘭」「梅」「竹」を表し、右端は菊ではなく入間市の特産品・狭山茶の「茶の花と実」をイメージしているようです。
(次ページ、西洋館と同年に建てられた武蔵豊岡教会に続く)
旧石川組製糸西洋館のご案内
名称 | 旧石川組製糸西洋館(本館・別館) |
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場所(住所) | 埼玉県入間市河原町13-13 地図で確認 |
建築日 | 大正10年(1921)7月7日上棟、大正11年~12年竣工 |
設計 | 室岡惣七(むろおか そうしち) |
建築 | 関根平蔵(せきね へいぞう) |
入館料 | 無料 ※現在は公開日のみ見学可 |
交通アクセス | 【電車】西武池袋線「入間市駅」下車、徒歩5分 |
駐車場 | 駐車場なし |
電話番号 | 04-2964-1111(入間市教育委員会) |
備考 |
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